斉藤国治著「国文国史に現れる星の記録の検証」の不審記事の検証




       斉藤国治著「国文国史に現れる星の記録の検証」(雄山閣書房)の不審記事について、 昔いくつか検証した時のまとめです。興味ある方の参考にしてもらえたら幸いです。

      ☆:重要と思われる項目
      ・:特に重要とは思われない項目

      その他:ワープロに一部旧漢字がないため当て字あり。
          惑星の光度はUSA「ALMANAC]で使用されている計算法による。


      II. 月星の食犯


      === ページ25 ====
      ・「月食火」724V15
       V17の月の出は(22:57)で火星食は見られず。


      ・「不審」725II20戊子 夜月犯土星
       この時期土星(0.75m)は明の星で夜には見えず。II20には出(04:24)入(14:17)。

       725III22(55/戊午)の22hの月入り時,金星(-4.12m)の北1.6°まで迫る。
       月は2月と移るが、土星と金星の誤認及び戊子と戊午の誤記では。
       四日巳丑と十七日壬寅の記事の後にきている説明はつくのでは。


      === ページ27 ====
      ・「不審」875I21 夜月犯昴星
       I19日中昴食。(17 TAUは13h食)
       2日のズレ若しくは年月が違う。


      ・「不審」875I26 夜月犯輿鬼
       I24夜19h οCnc(5.20m/3561)の南縁0.3に迫る。 
       2日のズレ若しくは年月が違う。


      ・「月犯房」878XII24 月犯房星
       この日の月の出は3:25前後で房星の食は見られなかったはず。


      === ページ28 ====
      ・「月食華」879I7 月犯華
       月入り17:09は日の入りのタイプミス。 


      ☆「月入牛」882X22 月行掩犯牽牛第一、二星
       X22月入り(22:02)前に牽牛南星ρCap(4.78m/7822)を掩蔽。
       潜入は21:23、再現は22:15。
       第一、二、三星との書換も見られ最初は掩犯牽牛第三星だったのでは。
       (縦書きでの三を一二と読み違えたのでは)


      === ページ29 ====
      ・「不審」891XII29 月犯食心星少人星
       XII30(17:00)に地球の裏側にてπSco(2.89m/5944)が月の北縁0.06に迫る。


      === ページ30 ====
      ・「月入太微」906VI2 月入太微、犯謁者星
       この日月入り前に謁者星の隣の7Vir(5.37m/4585)の食があり。
       潜入(23:56)月入(翌日00:30)。 


      ・「不審」898VII29 月犯土星
       月入り(20:50)時にνLib(5.20m/5622)の0.3に迫る。
      月犯土星は月犯低星の間違いでは。


      ・「月入り華」899VIII2 月犯華
       VIII3(01:00)にγTau(4.36m/1346)が月の南縁0.3に迫る。


      === ページ31 ====
      ・「月犯木」962V18 月興歳星同宿
       V19の月の入りは(02:52)。


      === ページ32 ====
      ☆「月犯右更」 965II8 星犯月
      星は金星。(20:42)に月の北辺0.1に迫る。


      === ページ33 ====
      ・「月与華合」973I16 月犯華
      δTau(3.76m/1373)をI16夕刻食。潜入(17:27)再現(18:47)。
       但し日の入りは(17:20)。


      ・「月食華」975VIII3 月犯華
      θ2Tau(3.40m/1412)をVIII4明け方食。潜入(02:33)再現(03:35)。


      === ページ34 ====
      ・「月犯金」1019III14 月犯太白星
       月と金の合経はIII12 21hのタイプミス。


      ☆「月土同舎」1071XI23 月犯鎮星 
      XI23(05:00)に水星が月の北縁0.27まで迫る。土星は誤認/誤記では。


      ☆「不審」1093X12 天文密奏
       X13明け方5hの水星と金星出時に互いの距離が0.85にあり。
      もっとも近づくのはX13の18h頃0.2。 北3.5にスピカあり。


      === ページ35 ====
      ☆「月犯火」1094VII19 星入半月の中
      北縁の火星の犯と同時に南縁にて金星の犯があり。金星は沈む前の(21:14)月の南
       縁0.3にあり。 「月己成細長」とは三日月の上部に火星下部に金星があり細長く
       見えたということと思われる。 これは本当に「希有の天変」。


      === ページ36 ====
      ・「月犯心」1149VI19 月犯心大星
       VI19 23hにσSco(2.89m/6084)を食。


      === ページ42 ====
      ・「月食牛」1176X12 月犯牛宿中央星
       月入りが(22:53)の為食は見られず。


      ・「月犯軒猿」1178 XII28月掩犯軒猿右民角星
       月の出直後にξLeo(4.97m/3782)を食。 
      潜入(19:20)、再現(20:12)。


      === ページ43 ====
      ・「月土同舎」1182II17 月犯鎮星
       II18の月の入りは(05:18)で月入り直前(05:05)に土星を食。


      === ページ44 ====
      ・「月与塀星合」1185III16 変有、月犯太微塀星
       月と土が21h過ぎに経合となり、月の南縁1.3にあり。
       1184IIにも土星は近くにあり。II27昼間に月と経合但し距離は2.5。


      ・「月謁者星同舎」1185XII16 月犯謁者星
      XII16(03:05)に月が土星を接食。


      ・「不審」1186III4 歳星自去
       III3に木星がβVir(3.61m/4540)に最接近(0.9)しており、月はただ参考に引
      用しているのでは。(119ページの木星変有りに関連)


      === ページ51 ====
      ・「月食房」1263XII27 月犯房第三星
       XII27の月の出は(3:35)で食は良く見えなっかった。


      === ページ53 ====
      ・「月犯土」1334V15 月犯鎮星
       祈祷(VI8)の3日後VI11の昼間(11h)に土星食あり。(地球の裏側)


      === ページ56 ====
      ・「月犯火」1358III6 月凌犯火惑星
       III6の月の出は(3:23)にて、月の出時にはすでに1.0の距離があり。


      ・「月食心」1358VIII13 月犯心中央星
       VIII13の月の出は13hであり少なくとも食は見えず。


      === ページ59 ====
      ☆「不審」1393V19 星浸月 
       前夜V18夜22h、月がαLeo(1.35m/3982)を食す。
      潜入(22:04)、再現(22:44)。


      === ページ60 ====
      ・「月犯華」1420XII17 有星犯月
       XII17は月の出が(15:00)の為、αTauの食は見えず。


      ・「月食華」1421I13 月中星入
       金星食は1421I1朝。潜入(06:43)、再現(07:40)。


      === ページ65 ====
      ・「誤記か」1509VI17 星浸月
       前日VI16の暁(03:40)月出時に月が水星(-0.74m)の0.25°まで迫る。
       記事はこの事では。 


      === ページ67 ====
      ☆1542XI5 月犯土星、太白星
       XI5の暁5hに月と木星が5.4の距離。月と金星が7.1の距離にあり。
       土星は木星の誤記、若しくは誤認では。(この時土星は既に沈んでいる)


      === ページ71 ====
      ☆「不審」1585VIII2 戌時、月歳星合
       この日夜20hにα2Lib(2.75m/5531)と経合となり月の北1.3°にあり。
       歳星とは何かの認識違いでは。


      ☆1591X25 虚第一星貫月
       この日火星(-O.21m)食有り。 潜入(20:59)、再現(21:34)。
       虚第一星は火星の誤認では。


      === ページ72 ====
      ・「不審」1634VIII1 星月を貫く
       前日VII31の夜月入り時22h、スピカαVir(0.98m/5056)の南0.95°まで迫る。
       またスピカの北1.6°には火星(0.89m)もあり。


      === ページ76 ====
      ・「月火食」1704IX16
       火星食はIX15暁方のタイプミス。


      === ページ80 ====
      ☆「不審」1774III18 月掩火星
       III18 20hにαTau(0.85m/1457)の食があり。潜入(19:35)、再現(20:48)。
       月掩火星はこれの誤認では。
       
      III.惑星現象


      === ページ97 ====
      ・「不審」878VII22 火星守天江
       金星(-4.0m)がVII22 14hにβVir(3.61m/4540)と最接近し0.2。 20hに0.4。
       前日VII21 20hに0.8であった。


      === ページ99 ====
      ☆「金与土合」891XI29 太白犯土星
       XI29夕18hに水星(-0.6m)と火星(1.2m)が3.8の距離にあり。 惑星誤認では。


      === ページ101 ====
      ☆「金入ひつじ宿」965II15 太白 頻示変異
       五ヶ日とあり、ここでの変異とはページ32の正月五日の月犯太白では。


      === ページ102 ====
      ・「火与哭星合」967XII23
       金与哭き星合のタイプミス。 


      === ページ103 ====
      ☆「不審」1028VIII12 頼隆又申伝
       数日来、水(-0.1m)金(-3.9m)火(1.8m)の3星合あり。
       VIII6 18hに水金間0.97、金火間1.72、火水間2.15。
       VIII7 18hに水金間0.97、金火間1.29、火水間1.29。
       VIII8 18hに水金間1.09、金火間0.64、火水間0.70。
       VIII9 18hに水金間1.29、金火間0.43、火水間0.98。
       VIII1018hに水金間1.51、金火間0.80、火水間1.71。
       VIII1118hに水金間1.74、金火間1.33、火水間2.52。


      ・「不審」1031X17 依有変異
       夕方没する時(18h)金星(-0.2m)と水星(-2.0)が2.1、金星とδSco(2.32m/5953)
       が1.7、金星とβSco(2.62m/5984)が1.7。水星とδSco(2.32m/5953)が1.7。
      この日の日没は(17:17)。


      === ページ104 ====
      ☆「不審」1060XII27 太白犯哭星
      金星(-4.4m)は18h、λAqr(3.74m/8698)と0.9の所。
      この日木星(-2.1m)は19h、”泣き星”ιAqr(4.244m/8418)と1.3の所。
      木星は哭星との距離も5.0あまりで金星と木星の誤認では。


      ☆「金与土合、金犯哭星、惑星名誤記」1103XI11
       X25/26夕方金星(-3.9m)と土星(0.5m)の距離は2.4。
      X26夕方水星(-0.4m)とαSco(0.96m/6134)との距離が2.2。
       X27暁方、木星(-1.7m)と火星(1.0m)の距離が0.2、この時スピカが3.6にあり。
      原本には「太白火星興犯央星」とあり金星と土星であれば心中央星との間に水星
      があったはずで、実際は「歳星火星興犯(角)大星」だったのでは。


      === ページ107 ====
      ・「火入塁壁陣」1166XI19 火犯塁壁陣第七星
       XI19 19hにφAqr(4.22m/8834)の0.6の所にあり。
       XI20 19hに最接近し0.08。


      === ページ109 ====
      ・「金入太微」1171XI9 太白入太微
       XI2暁4h θVir(4.38m/4963)の0.04に迫る。


      ・「火犯木」1173V13 火星犯歳星
       火(1.3m)犯木(-2.0m)と同時に金(-4.1m)犯土(0.6m)有り。
      V13 5h 距離が0.8。 V14 5h 距離が0.3。


      === ページ115 ====
      ☆「金与木合」1182III27 太白犯歳星
       朝鮮記録は惑星誤認では。
       IV12 19h金星(-4.0m)火星(1.7m)が0.6に最接近。


      === ページ118 ====
      ・「金入牛」1186II20 太白犯牽牛
       II20 6h 金星がρCap(4.78m/7822)の0.8に迫る。
       II21 6h 金星がρCap(4.78m/7822)の0.4。


      === ページ119 ====
      ・「金犯太微」1187X19太白犯太微左執法星
       X19暁6hには既に左執法星ηVir(3.89m/4689)と2.3の距離にあり。
      最接近はX21朝0.09。


      === ページ137 ====
      ・「木増光?」1252V16 近日歳星増光
       3月末が最暗であり5月は増光中には違いないのでは。 
      1月初め -2.3m、2月初め -2.1m、3月初め -2.1m
      4月初め -2.0m、5月初め -2.1m、6月初め -2.2m
      7月初め -2.4m、8月初め -2.6m、9月初め -2.8m


      === ページ160 ====
      ☆「金犯木」1423VIII5、29、31
       VIIからVIIIにかけて西天に地上から火木土の順に並んでおりそれに金星水星が
       近づいてきた。
       VII28夕金星と火星(1.8m)が0.5。 VIII14夕金星と木星(-1.7m)が0.3。
       VIII31には金星(-3.9m)と土星(0.8m)が経合となり2.5のところにあり。
       従って長い間祈祷が続いた。


      === ページ170 ====
      ・「不審」1443X27 寅時、太白辰星合犯
       この日朝5hに火星(1.01m)がαLeo(1.35m/3982)の北東1.7°にあり。
      この記事はこれの誤認か。


      === ページ172 ====
      ☆「不審」1446IX7 太白興歳星相合 3尺所
       IX7暁3hに金星(-4.3m)と土星(0.5m)が3.9の距離。 星名誤認では。


      === ページ174 ====
      ☆「不審」1448VIII25 太白興鎮星相犯 1尺5寸所
      VIII25暁5hに金星(-3.9m)がαLeo(1.35m/3982)の0.8に迫る。 誤認か。


      === ページ182 ====
      ・「不審」1489V〜 2星合
       1489年の5月中に惑星同士で星合することは無し。
       惑星と明るい恒星との星合は1489V25の火星(1.25m)とαLeo(1.35m/398
      2)の犯のみ。 23hに火星がαLeoの北0.9°にあり最接近。
       これはページ102の2項目目の記事に当たる。


      ・「不審」1466XII31 2星合
       XIII31夕方7h金星(-4.3m)がλAqr(3.74m/8698)と0.9の距離。
       XIII31暁方4h火星(1.4m)がβSco(2.62m/5984)と0.7の距離。
       強いて言えば火星の方が星変か。


      === ページ186 ====
      ・「不審」1489VI5 太白入犯軒猿中
       VI5夜20h、火星(1.3m)がρLeo(3.85m/4133)の北1.2にあり。 誤記か。


      === ページ189 ====
      ☆「火入太微、星名と日付の誤記」1494XI7 火星犯太微東藩上将星 六寸所
       XI7暁5h、火星(1.56m)が左執法ηVir(3.89m/4689)と距離0.7にあり。
       星名のみの誤記では。


      === ページ190 ====
      ☆「不審」1500VIII15 太白興水曜同宿 一尺所
       VIII15夕方20h金星(-4.4m)がスピカαVir(0.98m/5056)と距離0.8にあり。
       1492VIII13、14と同じ誤認では。


      === ページ198 ====
      ☆「不審」1587VIII27(グレコリオ暦) 寅時 明星火星相犯
       この時期火星(0.92m)は宵の星で前日(21:21)に没。
       この日朝5hに金星(-3.94m)と木星(-1.83m)が0.48°にて犯。
       記事は火星と木星の惑星誤認では。 


                    

Copyright(C) 1996 Shinobu Takesako
All rights reserved