CGで巡る月面名所図会



    昔作った月の標高データから立体図を描くプログラムで描いた月面図を紹介します。元の月標高データはNASAのLOLAのLDEM_64.img ファイルです。なお,画像は見た目と同じく,上が北です。データは1/64度なので解像度は良くありませんが,少望遠鏡で写した写真の程度はあります。結構リアルな感じです。

    タイトルにある地図番号は,『Atlas of the Moon』(Antonin Duki)の番号です。
    ここでは日本の天文界の不思議な風習である望遠鏡でみた上下反転した図ではなく、世界標準の見た目の図(上が月の北)で表示しています。双眼鏡で見るのに便利です。「望遠鏡でみた上下反転した図」という定義が世界標準でないガラパゴスな定義であることは、実は明らかなのです。例えば、南半球シドニーとかに行くと、月は北の空を、月の北側を下にして回ります。なので望遠鏡でみれば、日本とは逆に、月の北側が上になるのです。

    【参考図書】
    ・Antonin Duki『Atlas of the Moon』Sky & Telescope(1992)
    ・Sky & Telescope『Field map of the Moon』Sky & Telescope(2005)
    ・白尾元理『月の地形ウオッチングガイド』誠文堂新光社(2009)
    ・白尾元理/佐藤昌三『図説 月面ガイド』立風書房(1987)


【01】アルプス山脈とアルプス谷 【地図番号:3,4,11,12】
 アルプス山脈のあたりは天文雑誌でも月の被写体として狙われる場所です。山脈の右にみえる谷はアルプス峡谷と呼ばれ,その長さは180kmです。
 左のクレータはプラトー(直径:101km)です。その南,氷の海の中に突き出た山はピコ山(標高:2400m)と呼ばれています。
 
                                (2022/02/26)

 
【02】アルキメデスクレータとアペニン山脈(アポロ15号着陸地点) 【地図番号:22】
 画像中心がアペニン山脈,左の大きなクレータがアルキメデスクレータ(直径:83km)です。
 画面の中央左の赤い点がアポロ15号の着陸地点のハドレー谷(北緯26度07分 東経3度38分)です。右の地図は『Atlas of the Moon』(Antonin Duki)のものです。アポロ15号の着陸地点に三角の印があります。
                     (2022/02/26)

 
【03】アリスタルコス台地 【地図番号:18,19】
 アリスタルコス台地は月面でも特異な地域です。右のクレータがアリスタコス(直径:40km),左がヘロドトス(直径:35km)です。右側の半分消えているのはプリンツクレータ(直径:47km)です。アリスタルコス台地では、多くの月面発光現象が報告されています。 月面描画のプログラムを作り始めたのも,この地域を描いてみたかったからです。
 
                                (2022/02/26)

 
【04】マリウスの丘 【地図番号:18,29】
 アリスタルコス台地の南にあり,マリウスクレータ(直径:41km)の周りに火山性のドームが広がる地域。
 「かぐや」が発見した縦孔(直径100m)が赤のポイント。位置は北緯14.15度,西経56.75度辺り。この穴から西に数十kmも延びる巨大な空洞があると発表されています。右図はその縦穴付近の拡大図ですが,1/64度のデータなので,見えない。
                (2022/02/26)

 
【05】ポシドニウスクレータ 【地図番号:14】
 晴れの海の北東部の縁にあるポシドニウスクレータ(直径:95km)は二重のリムを持つクレータとして有名です。また,クレータの底には何本かの谷があります。ここも被写体として名所です。南東のクレータはチャコルナック(直径:51km)です。なお,アポロ17号は南側の,晴れの海の南東部の縁に着陸しています。
                                (2022/02/26)

 
【06】アリストテレスクレータ周辺 【地図番号:5,6,13,14】
 北の美しいクレータはアリストテレス(直径:87km)。その南東部の崩れたクレータはミッシェル(直径:30km)。西南部のクレータはエウドクソス(直径:67km)。南東部の死者の湖の中央にあるクレータはビュルク(直径:40km)。このクレータから西に伸びる谷はビュルク谷。
                                (2022/02/26)

 
【07】カッシーニクレータとコーカサス山脈 【地図番号:12,13】
 【01】のアルプス山脈の南にあるのがカッシーニクレータ(直径:57km)。その南にあるのがコーカサス山脈(520km)。北側は【06】のエウドクソスクレータ(直径:67km)まで続く。南東部のアウスティルスクレータ(直径:55km)。このクレータの南東に【02】のアルキメデスクレータ(直径:83km)がある。エウドクソスクレータの南,コーカサス山脈の東にある盆地はアレキサンダーと呼ばれている。
                                (2022/02/26)

 
【08】中央北部の位置関係
 【01】アペニン山脈とアルプス谷,【02】アルキメデスクレータとアペニン山脈,【05】ポシドニウスクレータ,【06】アリストテレスクレータ周辺,【07】カッシーニクレータとコーカサス山脈を含む画像です。
                                (2022/02/27)

 
【09】コペルニクスクレータ周辺 【地図番号:31,32】
 コペルニクスクレータ(直径:93km)は月面の中央の西北部にあり良く目立つクレータです。ペルニクスの北側はカルパティア山脈です。にあるクレータはエラトステネス(直径:58km)。東から延びてきた山脈はアペニン山脈。その南の消えかけたクレータはスタディウス(直径:69km)。コペルニクスの南のクレータはレインホールド(直径:48km)。
                                (2022/02/27)

 
【10】月の中心部 【地図番号:33,44】
 月の地表座標の原点が赤いポイント。
 画像の北東部がアペニン山脈。そこにあるのがエラトステネスクレータ。中心点のすぐ北の2つのクレータの西側はパラス(直径:50km),東側はムルシオンMurchison(直径: 58km)。その東の小さなクレータはトリースネッカー(直径:26km)。赤いポイントのすぐ南の崩れたクレータはオポルツア(直径: 43km)。南の大きなクレータはプトレマイオス(直径:153km)。その北東のクレータはヒッパルコス(直径: 150km)。その南がアルバテグニテウス(直径:136km)。                   (2022/02/27)

 
【11】ヒギヌス谷とアリアデウス谷 【地図番号:34】
 西側の谷がヒギヌス谷(220km),東側がアリアデウス谷(220km)。アリアデウス谷の北の大きなクレータはジュリアスシーザクレータ(直径:90km)。中央南のクレータはアグリッパ(直径:46km)。
                                (2022/02/27)

 
【12】ガッサンディクレータ周辺 【地図番号:51,52】
 中央の海は湿りの海。その北辺にあるのがガッサンディクレータ(直径:33km)。クレータ内部に山や谷が見える名所。西の大きなクレータはメルセニウス(直径:84km)
                                (2022/02/27)

 
【13】ティコクレータ 【地図番号:64】
 満月の月の写真で南部で輝いているクレータがティコ(直径:85km/4850m)。しかし,標高図では周りに多くのクレータがあるのであまり目立たない。
                                (2022/02/27)

 
【14】直線壁 【地図番号:54】
 直線壁と呼ばれる地形ですが,解像度が悪いので良く出ていないですね。長さは110km。高低差240-300mで両側に2.5km離れています。
                                (2022/02/27)

 
【15】リュンカー山 【地図番号:8】
 アリスタルコス台地の北西にある火山性ドームのリュンカー山(直径:70km)。地球からは月の端になるので見にくい。
                                (2022/02/27)

 
【16】アトラスクレータ 【地図番号:14,15】
 右のアトラスクレータ(直径:87km)。底にアトラス谷が見えます。月の北東の端にあります。左はヘラクレスクレータ(直径:69km)
                                (2022/02/28)

 
【17】ペタビウスクレータ 【地図番号:59】
 ペタビウスクレータ(直径:177km)。月の南東の端にあります。谷の底には山や谷が見えます。
 右の画像は若干角度と日の当たる方向を変えたものです。
                     (2022/02/28)

 
【18】ヘベリウスクレータ周辺 【地図番号:28,39】
 ここは月面中央の西端の地域。中央南はグルマルディクレータ(内輪山直径:222km),その西がリチオリクレータ(直径:146km)。グルマルディの北にあるのがヘベリウスクレータ(直径:106km)。クレータの底に谷が見えます。その北がカバレリウスクレータ(直径:58km)
                                (2022/02/28)

 
【19】シラークレータ周辺 【地図番号:63,71】
 ここは月面中央の南西端の地域。シラークレータ(直径:179kmx71km)は細長いクレータとして有名です。その北にはクレータが重なりだるまに見えるハインツェルクレータ(直径:70km)があります。
                                (2022/02/28)

 
【20】ケプラークレータ周辺 【地図番号:29,30】
 マリウスの丘とコペルニクスクレータの間の地域。北のクレータがケプラー(直径: 32km)。南のクレータがエンケ(直径:29km)。両方とも小さめのクレータ。
                                (2022/02/28)

 
【21】オリエンタルベイズン周辺 【地図番号:50】
 月の西の端にあるため、地球から見たのでは形状ははっきりしない。ルナーオービター4の写真(1967)により3重のクレータであることが判明した。中央部は東の海(直径300km)、外側3番めのリングをコルディレラ山脈(直径900km)、2番めをルック山脈とよんでいる。 CGならではの景色。東の海という名称は昔名付けられた名称。現在では月の座標が東西逆になっている。
                                (2022/10/30)

 
【22】雨の海の溶岩流の跡 【地図番号:20、10】
 右下はランベルトクレータ(直径30km)。これから北西に伸びているのが溶岩流の跡。手前が、ジルケルの背(210km)。それに続くのがハイムの背(130km)。南西のオイラークレータ近くの火口から流れた溶岩流。中央にある小高い山はハイヤー山。 溶岩流の高さは35mで、太陽高度が低い時でないと地球からは見えないとのこと。
                                (2022/10/30)

 


2022/10/30 【21】追加
2022/02/26 掲載

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