9. 四段漏刻の誤差の改善(誤差1分以内)




 前回までの4段漏刻のシミュレーションでは誤差が1分だったので、誤差1分以内を目標にパラメータを変更します。

1段の漏刻のシミュレーションより
1段の漏刻のシミュレーションは以下の内容だったので、ここでは高低差50cm以下で誤差が最小になるd=0.07mm、H1=408mmを一段目に使用します。
出水口
直径d1(cm)
初期水位
H1 (mm)
最大誤差
(分)
0.100 0.00 439.5
0.095 0.00 366.0
0.090 10.00 294.9
0.085 47.00 234.9
0.080 117.00 184.3
0.075 231.00 142.0
0.070 408.00 107.7
0.065 676.00 79.9

2段の漏刻のシミュレーションより
 最初のシミュレーションでは2段目以降は直径0.1cmの出水口を仮定していたが、ここでは出水口直径d2を変化させた場合の 初期水位H2(mm)とその時の誤差をシミュレーションした場合の結果が以下。この表より初期水位が50cm程度のd2=0.08cm、H2=440mmを選択した。この場合の最大誤差は約8分。
d1(cm)d2(cm)H1(mm)H2(mm)誤差(分)
0.070 0.090 408.0 258.0 13.9
0.070 0.085 408.0 335.0 10.3
0.070 0.080 408.0 440.0 8.1
0.070 0.075 408.0 583.0 5.7
0.070 0.070 408.0 784.0 4.3
0.070 0.065 408.0 1071.0 3.0
0.070 0.065 408.0 1072.0 3.4
0.070 0.060 408.0 1494.0 2.2
0.070 0.060 408.0 1495.0 2.4

d2,H2を求めるシミュレーションソフト:waterclock_09_1.c

 

第3段,第4段の漏刻のシミュレーションより
 同様にd2=d3=d4=0.08cmとして、H3及びH4を求めると、H3=487mm及びH4=490mmとなる。

H4を求めるシミュレーションソフト:waterclock_09_2.c

 

改善後の4段漏刻のシミュレーション結果
 以上の結果をもとにシミュレーションした結果が以下の表。誤差はほぼ30秒以内となっている。 4槽目の水位変化は2mm以内まで抑えられている。

シミュレーションソフトの計算結果
時刻(h)h1(mm)h2(mm)h3(mm)h4(mm)Rh(mm)誤差(分)
0.0 1000.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
1.0 946.4 13.8 -1.7 -0.2 41.7 -0.1
2.0 893.8 25.9 -2.8 -0.4 83.4 -0.1
3.0 842.2 36.6 -3.3 -0.6 125.1 -0.2
4.0 791.7 45.7 -3.4 -0.9 166.8 -0.2
5.0 742.3 53.5 -3.2 -1.1 208.5 -0.2
6.0 693.8 59.9 -2.6 -1.3 250.2 -0.2
7.0 646.5 65.0 -1.9 -1.5 291.8 -0.2
8.0 600.1 68.9 -1.0 -1.6 333.5 -0.2
9.0 554.8 71.6 0.1 -1.7 375.1 -0.2
10.0 510.6 73.2 1.1 -1.7 416.8 -0.2
11.0 467.3 73.7 2.2 -1.7 458.4 -0.2
12.0 425.2 73.2 3.2 -1.6 500.1 -0.1
13.0 384.0 71.6 4.1 -1.5 541.7 -0.1
14.0 343.9 69.1 4.9 -1.4 583.4 -0.1
15.0 304.9 65.7 5.5 -1.2 625.1 -0.1
16.0 266.9 61.4 6.0 -1.1 666.7 -0.1
17.0 229.9 56.3 6.2 -0.9 708.4 -0.1
18.0 194.0 50.4 6.2 -0.7 750.1 -0.2
19.0 159.1 43.6 6.0 -0.6 791.8 -0.2
20.0 125.3 36.2 5.4 -0.4 833.5 -0.2
21.0 92.4 28.0 4.6 -0.3 875.2 -0.3
22.0 60.7 19.2 3.4 -0.3 916.9 -0.4
23.0 30.0 9.7 1.9 -0.3 958.6 -0.4
24.0 0.3 -0.3 -0.0 -0.4 1000.3 -0.5
H1= 408.0 H2= 440.0 H3= 487.0 H4= 490.0最大誤差⇒ 0.5(分)
d1= 0.070 d2= 0.080 d3= 0.080 d4= 0.080
(いずれの場合も水槽の一辺は32.8cm⇒面積は1075.84cm2)

上記表のシミュレーションソフト:waterclock_09_3.c

 

漏刻の初期設計について
 今回のシミュレーションでは出水口=0.1cmで水位200mmの時の出水量よりで水槽の断面積の計算を行ったが、上記結果から初期水位はできるだけ高く取った方が誤差が小さくなることがわかる。また第1水槽はできるだけ他の水槽より断面積を広く取り高低差を少なくした方が誤差を小さくできる。 <

出水槽の給水の問題
 漏刻の給水については、単純に受水槽に落ちた水を第1槽に戻せば良いと考えられがちであるが、例えば12時の時点(h1=425.2mm,h2=73.2mm,h3=3.2mm,h4=-1.6mm)で、第1槽だけに給水して、h1=1000mmに戻した場合、24時間後に上記結果とは違った結果がでることは明らか。従って途中で給水する場合にはh1,h2,h3,h4の値を揃える必要がある。従って短時間の間隔での注ぎ足しは面倒で実際的でない。上記の場合、24時の時点でh2,h3,h4は0なので、h1だけを1000に戻せば良いことになる。
一度で給水するには、短時間に給水するためにその上にもう一段給水槽があったのでは無いかと思う。

受水槽の排水の問題
 大型の排水口をつけて短時間(1分以内ぐらい)に排水すればあまり問題は無いと考えられる。いずれにせよ、排水にかかる時間は一定なのでその分あらかじめ貯める(若しくは排水しない)ような仕組みが考えれていたと思われる。

 


2017/10/25 Up

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