**************************************************************************  星食経路プログラム SmapWin ドキュメント **************************************************************************                     SmapWin Ver. 2.20 2022.12.14                       Copyright (C) 1996-2022  竹迫                      ( takesako@mrj.biglobe.ne.jp)   1.概要  SmapWinはDE441の天文暦で計算したベッセッル要素を基に星食の経路を地球儀上に  表示するソフトウエアです。具体的には中央線、南北限界線、星出没限界線、星出  没時の食最大線をサポ−トし、時間の経過に沿って各線を点で描きます。また特定  場所での最大食時間場所、接食開始終了時間等及び月縁接食図も表示可能です。  また線の色でその地点の星食が日中に起こるか、夜に起こるかが分かるようにして  います。水色の線は太陽高度が0°以上の日中であることを示します。  地球儀表示後にはその星食における特定の場所での星食開始終了時刻及び最大食の  時間・食分及びその進行状況を表示出来ます。また、経度をパラメータとした星食  の北限、中央、南限を計算するモードも用意しました。  なお、本リリースではファイルサイズの関係で2000年から2100年迄の日本  付近でみらる星食のベッセル要素を添付します。対象は惑星(水星、金星、火星、  木星、土星、天王星、海王星、冥王星)およびZX星表での等級が8.0までの恒星を対象  にしています。  なお限界線や食図については計算方法やΔTの値等の差で他の予想や実際の事象とは  月での0.1秒角(約200m)程度の差は予想されます。  簡単な使用方法:  @ アイコンにある「星食リスト」クリックします。    ⇒星食検索リストがポップアップします。  A 「検索開始」ボタンをクリックします。    ⇒検索期間中の星食のリストが表示されます。     (日付、XZ星表番号、SAO星表番号、ZC星表番号)  B 表示させたい星食をマウスでクリックします。    そのあと、「星食図描画」ボタンをクリックします。    ⇒地球儀上にその星食図が表示されます。  接食図の表示方法  @ 地球儀上で星食が起きる地点で、「右のダブルクリック」をします。    ⇒その地点での星食の状況が表示されます。  A アイコンの「月縁の表示」をクリックする。    ⇒その地点での最大食時の月縁が表示されます。    星の接食状況を表示させるには、限界線に近いとことでダブルクリックします。    正確な地点で表示させたい場合には、メニューから    「表示モード」⇒「局地状況」をチェック。⇒「入力」をチェック⇒緯度経度    を入力⇒「OK」でその地点の局地状況が表示され。その後「月縁表示」    アイコンをクリックすると接食状況が表示されます。    1.1 Version 2.1から改善点   1) ベッセル要素をDE441ベースにアップデイト   1) デルタTの値をアップデイト     ・-720年から2019年までを修正。(L. V. Morrison(2021)による) 2.星食表示範囲  このプログラムはあらかじめ計算されたベッセル要素をもとに計算します。  ベッセル要素はJPLから公開されているDE441の月および惑星の位置情報とXZ星表の  光度8.0以上の恒星の位置情報から、US NAVAL OBSERVATORY発行の「EXPLANATORY   SUPPLEMENT TO THE ASTRO-NOMICAL EPHEMERIS,1974版」 の計算方式にて  ベッセル要素を計算しています。ベッセル要素はAD2000年からAD2035年まで計算し、  本ソフトには日本で観測可能な光度が8.0以上の星食の要素を添付しています。 3.リリースファイル内容及び起動方法   リリースファイルSmapWin_jpn_2.0.zipには次のファイルが含まれます。  1) SmapWin.exe 実行ファイル プログラム本体  2) SmapWin.txt 本ドキュメントファイル  3) ec****.prn 星食の時代別ベッセル要素  4) **cil.cbd CIA地図ファイル  5) location.new 都市情報ファイル  6) LRO.dat NASA 月標高データ  7) xz_catalog_upto8.0v2.prn XZカタログ(XZ80星表より光度8.0まで抽出したリスト)  8) 2017100918.klm klmファイルの出力例(日本時間2017/10/10のアルデバラン食限界線) 4.開発や動作確認環境等 ・開発環境: Windows10 (64bit) + MS Visual C++ 2008で開発しています。 ・動作確認: Windows7 (64bit)でも動作確認しています。 5.起動および使用方法 5.1 起動方法   すべてのファイルを同じディレクトリで解凍し、smapwin.exeを   ウィンドウズ エクスプローラ上でダブルクリックしてください。 5.2 パラメータ設定  1)表示モードメニュー   @星食描画範囲/表示設定: 世界地図の固定表示です。拡大縮小はできません。    オプション:     ・CIA詳細地図の表示:CIAより公開のデータにより詳細図が表示されます。     ・経度緯度線表示        この項目を選択すると、経度及び緯度線が表示されます。        経度は15度間隔緯度は10度間隔です。     ・デルタT調整        入力した値で使用するデルタTの値が調整されます。値は秒です。     ・KMLファイルの出力        星食限界線をエクスポートできます。   A星食限界線の表示    経度を起点とした星食限界地点を表示します。   B特定の場所での食状況表示:    あらかじめいくつかの地点が登録されていますので、登録されている場所で良い    場合にはその地点をメニューで選択。登録されていない場所の場合には”入力”    を選び緯度経度を入力下さい。尚、東経が+、西経が−、及び北緯が+、南緯が    −です。 月の高度(SAN ALT)がマイナスの場合には見えません。    各地での食開始、最大、終了時の方向及び高度の概略と、最大食時点での食分が    表示されます。   C特定の場所での全天図表示:    全天ボタンを押すと、Aで設定されている地点における最大食時間での全天図を    表示します。   D特定の場所での接食図表示:    接食図ボタンを押すと、Aで設定されている地点における月との接食図を表示します。    標高データはNASAのLROデータをもとにしています。  2)検索モードメニュー   @全ての星食:フィルタをかけずに全ての星食を表示します。   A星食タイプ選択 : 選択した星食タイプでフィルターをかけます。          1.部分食(星食影が一部(北部或いは南部)が地球をはずれる)          2.全食(星食影が全て地球上に落ちる)   A観測地と食分選択 : 使用できません。   BXZ星表番号 : XZ星表番号でフィルターをかけます。          XZ星表番号を入力下さい。 5.2 年代設定メニュー   @年 :表示したい星食の起きた年を入力下さい。   A月 :表示したい星食の起きた月を入力下さい。   B日 :表示したい星食の起きた日付を入力下さい。 5.3 ツールバー     現在サポートしている機能。     1)”←” : ”戻る”ボタン。条件に合った前の星食が表示されます。             但し、検索モードでは使用できません。 一旦前に戻ってから、前進機能(右矢印)で検索ください。     2)”→” : ”ネクスト”ボタン。条件に合う次の月食が表示されます。     3)”リスト”:”星食検索リスト”ボタン。入力した検索開始年から             調査年間の間で検索モードメニューで設定された条件             に合う星食のリストが表示されます。             検索される星食は日付順に最大1000個(約1年分)です。             リストの中の星食をクリックで選択し、星食描画ボタ             ンを押すと、その星食が表示されます。     4)”地球”: ”星食図モード”に戻ります。     5)”星食”: ”局地情報表示”表示モードで設定されている場所の             局地情報が表示されます。     6)”地図”: 地球の影に入る月の様子を表示します。     7)”全天”: ”全天”ボタン。全天情報表示。     8)”接食”: ”接食”ボタン。接食マップが表示可能です。 5.4 クリックによる動作     1)左クリック   :  クリックされた地点の緯度経度表示     2)右ダブルクリック:  クリックされた地点の局地情報表示                  (最初から最後まで観測できる地域にかぎます) 5.5 地球儀/地図表示画面   起動には起動した年月から先の一番近い次の星食が表示されます。 5.6 その他注意事項  ・地方時間(LMT)は(UT+観測値/15°)で計算していますので、JST   の様な標準時ではありません。注意してください。  ・地方標準時は(UT+INT(観測値/15°+0.5))で計算していますの   で、実際に使用されている地方標準時とはずれている場合があります。 6.計算式・データの出典及び参考文献 6.1 ベッセル要素 恒星の位置情報は「XZ80星表」を使用。 月及び惑星の位置計算:NASA/JPLのDE441を使用。 これらで求めた恒星、惑星と月の位置要素から、US NAVAL OBSERVATORY 「EXPLANATORY SUPPLEMENT TO THE ASTRONOMICAL EPHEMERIS,1974版」 に記載の日 食の計算方式をベースに星食のベッセル要素を計算しています。 また「ASTRONOMICAL TABLES OF THE SUN,MOON AND PLANETS, 2ND ED.」も参考にし ました。 ベッセル要素の計算に使用している基本パラメータ ---------------------------------------------- Earth's Equatorial radius : 6378.1366 (km) K : 0.27250760 1 astronomical unit : 1.49597870e8 (km) 尚、SMAPの計算値と他の予想の差は開始終了時刻で数秒です。 6.2 SC****.PRNファイルにあるベッセル要素の説明 各星食は各3行よりなります。詳しくは「ELEMENTS・・・」を参照下さい。 ・1行目 YEAR,MONTH,DAY :星食の最大食時の日付(UT)です。 TYPE :星食のタイプです。         1:星食影が一部(北部或いは南部)が地球をはずれる         2:星食影が全て地球上に落ちる MAG :恒星/惑星の光度です。 γ     :基準面にて月の影の中心より地球の中心迄の最短時の距離。       マイナスは地球の中心より南を通ったことになります。   JD       :上記γ(最大食)に於いてのユリウス日(UT)。 K       :最大星食時点での月齢です。 XZ     :XZ星表番号です。 T0 :以下のベッセル要素の基準t=0となる時間(ET)。 ZC  : ZC星表番号です。 SAO : SAO星表番号です。 HIP : ヒッパルコス星表番号です。(version 2で追加) ・2行目 X0,X1,X2,X3 : X要素、X = X0 + X1*t + X2*t*t + X3*t*t*tで計算される。 Y0,Y1,Y2,Y3 : Y要素、Y = Y0 + Y1*t + Y2*t*t + Y3*t*t*tで計算される。 D0,D1,D2 : D要素、D = D0 + D1*t + D2*t*t で計算される。 ・3行目 M0,M1 : M要素、M = M0 + M1*t で計算される。 L10,L11,L12 : L1要素、L1=L10 +L11*t +L12*t*t で計算される。 L20,L21,L22 : L2要素、L2=L20 +L21*t +L22*t*t で計算される。 tan f1 : tan f1要素 tan f2 : tan f2要素 6.4 特定の場所での星食状況 「ELEMENTS・・・」によります。また日の出、日の入り(-0.8°で計算)で終了す る場合は、その時刻及びその時の食分も表示します。 また星食状況の作図には長谷川一郎著「天文計算入門」も参考にしました。 6.5 経度をパラメータとした星食北限、中央、南限の計算 「ELEMENTS・・・」により計算しています。 6.6 デルタT ・2018末まではL. V. Morrison(2021)による。それ以降実測値。  2022年以降は最近の傾向を考慮した予想値。  Year deltaT  ---- ------  2019 69.2  2020 69.4  2021 69.4  2022 69.3 (この年の年初は確定値、以降は予想)  2023 69.3  2024 69.5  2025 69.8  2026 70.0  2027 70.3  2028 70.5  2029 70.8  2030 71.0  2040 74.3  2050 78.3  2060 83.3  2070 90.1  2080 98.3  2090 106.8  2100 115.0 ・月の軌道に対するデルタT  「DE441」の潮汐パラメータはほぼ-26"/cy2なので月の軌道に対するデルタTによる  補正は行ってません。 7. 参考文献 プログラムの構想/作成/検証に以下の資料を利用しました。 ・斉藤国治著「古天文学」1989、恒星社厚生閣。       「星の古記録」岩波新書207、2nd 1993、岩波書店 ・長谷川一郎著「天文計算入門」1986、恒星社厚生閣。 ・佐藤勲著「ロバートソン星表2000」1986、掩蔽観測グループ ・地人書館「天文観測年表’95」 ・ヤン アダムチェフスキー「ニコラウス・コペルニクス」1973、日本放送協会主出版 ・J.MEEUS著「ASTRONOMICAL ALGORITHMS」1991,Willmann-Bell,Inc.       「ELEMENTS OF SOLAR ECLIPSES:1951-2200」1989,Willmann-Bell,Inc.       「ASTRONOMICAL TABLES OF THE SUN,MOON AND PLANETS, 2ND ED.」 1995,Willmann-Bell,Inc. ・L. V. Morrison, M. Zawilski,C. Y. Hohenkerkand F. R. Stephenson 「Addendum 2020 to Measurement of the Earth’s Rotation  : 720 BC to AD 2015’The Supplement」(2021) ・US NAVAL OBSERVATORY編    「EXPLANATORY SUPPLEMENT TO THE ASTRONOMICAL EPHEMERIS,1974版」    「Astronomical Almanac 2014」 ・DAVID GILL「OCCULTATION OF STARS BY THE MOON, ROYAL OBSERVATORY CAPE OF GOOD HOPE, 1835 TO 1880」1886 8.補足事項 本プログラムは無保証です。本プログラムの使用によっていかなる損害が生じても いっさい責任は負えません。しかしながら、バグ・改善要望につきましては出来る だけ対応したいと思いますのでお知らせください。 営利目的(無料配付を含む)での本プログラムの配布は禁止します。また著作権は 放棄していません。 9.本プログラムの履歴  1996年10月 1日 DOS版 Smap ver. 1.0 リリース  2014年 4月15日 Windows版 SmapWin ver. 1.0 リリース  2017年 8月 9日 Windows版 SmapWin ver. 2.0 リリース  2022年 8月 1日 Windows版 SmapWin ver. 2.1 リリース  2022年 8月 3日 Windows版 SmapWin ver. 2.11 リリース  2022年12月14日 Windows版 SmapWin ver. 2.20 リリース 10.おわりに  本プログラムの地図ソフトのベースとなった地球儀プログラム(GMAP)を作成され、  ソースを公開されていた、若浦 力(PFB02336)さんに感謝致します。  なお、SmapWinは日食ソフトEmapWinを改修して作成しているため、表示に星食では  不適当な用語が使用されているとことがあります。  今後改良していきたいと思います。