日蝕観望記(モンゴル)

「雪舞うモンゴルの大地に黒い太陽を追う」

−ダルハン日食観測旅行覚書− 97年 3月 9日



    馬 日蝕プレート
      
        

    3月7日(金) 晴れ
    4時    起床、
    6時25分 横浜発成田EXPで成田へ。荷物を抱え駅までにダウンで大汗。
    8時    成田着、チェックインを済ましゲートに向かうが、呼び出し放送で
          他のメンバー9人に合流。団体チッケットということで裏の団体カ
          ウンターに行くが時間がかかる、地上職員はいつも通り感じが横柄。
    10時   成田発若干出発が遅れる。一路北京へ。
          北京でのトランジットはそれほど問題なく過ぎる。
          他の名古屋と関空よりのメンバー2人と合流、総勢12名がそろう。
    16時   北京発、いよいよモンゴルへ。チャーターのはずなのになぜか現地
          の人が何人か乗っている。
    18時   ウランバートル着、バスにてダルハンへ。
          予想通り暖房が効かない。膝が冷える。対向車が全く無い。
          道がでこぼこ、荷物が時々飛び上がる。
    23時   途中休憩、外に出る。星が手の届く高さに。
          西の空にスバル、ヒヤデス、オリオン、シリウス等々、凛々と輝く。
          建礼門院右京太夫の「空を見上げたれば、ことに晴れて浅葱色なる
          に、光ことごとしき星の大きなる、むらなく出でたる、なのめなら
          ずおもしろくて、花の紙に箔をうち散らしたるによう似たり。」を
          思い出す。やはりこれは冬の星座を詠んだものだと思う。と、思っ
          ているうちに髪の毛座を見損なう。星の降る空はこれが最後だった。
          ダウンのズボンを着込む。この後は地獄、バスの窓の内側が凍り始
          める、辺りに光が見えない。町の灯が恋しい。ひたすら灯りを探す。

    3月8日(土) 晴れ
    早朝2時  ダルハン着、宿のマンションの中は天国、階段までヒータがある。
          場所は6階、リビング、キッチン、バス、寝室の構成。空はもやっ
          ている。時間もないのでそのまま寝ずにリハーサルの準備。
    5時過ぎ  ヘールボップが見えるが、もやで元気が無い。
    6時過ぎ  屋上に梯子をつたって登る。氷がはっているがロケーションは最高。
    7時過ぎ  太陽が昇。地平線の上に雲があり、太陽をかこむ。
    8時過ぎ  雲も晴れる。明日もこのぐらいの天気を期待する。
    10時   リハーサル終了。昼食カップ麺。カップ麺は生まれて2回目。こん
          なことが無いと食べなかったと思う。日本製電子レンジ、ポットが
          あり、レトルト食品の調理は苦労しない。そのまま部屋の隅で寝袋
          に縮こまって仮眠。
    14時   起きる。
    15時   ダルハンの町を散策。マンションの出口に日食をデザインした垂れ
          幕が下がっていた。モンゴルでも中国の影響か龍が太陽を食べるの
          が日食という伝説があるようだ。

    日蝕の垂れ幕 垂れ幕

          現地の大人の人はほとんど黒の上着で彩りが無い。我々が目立つ。
          でも子供たちはなかなかカラフル。
          バザールがあり、ラクダ乗りなどをやっている。その裏に日本観測
          隊用のゲルが30−40個あるが、帰りがけに数台のバスが到着。

    広場で会った少年達 少年達

    18時   マンションへ。夕食カレー。家主さんがマトン餃子を持ってくる。
          家主さんと記念撮影。家主さんがリモコンシャッターでシャッター
          を切ったのには皆唖然。
    22時   寝る。

    3月9日(日) 曇りのち晴れ
    4時半   起きる。
          ベランダに出た人達の「透明度は良い、星は見えない」で始まる。
          これを日本語では「曇り」というのだが、これは業界の禁句、誰も
          口に出さない。曇りのせいか気温もそんなに低くない。
    5時    雪も降り始める。朝食カップ麺。
    6時    衛星TVの「NHK朝7時のニュース」を見る、画面ではダルハン
          は横殴りの雪。でも、マンションではそれほど降ってはいない。
          ここは「ダルハソ」ではないかとの声も出始める。
    7時    あたりは明るくなり、曇っているのがはっきりとわかる。
    7時48分 第一接触 雲に隠れて太陽が全然見えない。
    8時過ぎ  祈るような気持ちで、望遠レンズも持って屋上へ上がる。空が明る
          くなりはじめる。
    8時20分 雲の中に太陽が現れる。広角から望遠へのレンズ交換など急いで準
          備をはじめる。ND400のフィルターをかけたら太陽が見えず、
          ピントが出ない。いつもの日食の様に犬が吠えはじめる。
    8時48分 第2接触。皆既始まる。今度は人も吠えている。
          暗くなり、雲越しにコロナが広がるのがわかる。

    雲を透かして見た日蝕 日蝕
    (CanonF1+300mmx2 F5.6 露出自動)

          温度は−30〜−40°の前評判とは違って、−10°前後でほと
          んど変わらず。
    8時51分 第3接触。ダイアモンドリングがすばらしい。
          ほとんどあきらめていた日食を雲越しではあるが見ることができ、
          皆感激。屋上で感激の撮影会。

    日食後の屋上風景 屋上

    9時半   機材撤収、パッキング。
    10時   昼食カレー。
    12時   バスでウランバートルへ。バスの運チャン元気良く他のツアーバス
          を抜きにかかるがタイヤがパンク。スペアタイヤも溝が無い。
          これが初日なら、たぶん遭難していた。
    16時   途中の茶店でしょっぱいお茶を飲む。店主が裏に馬がいるので乗ら
          ないかと。入るときに裏には馬なんかいなかったのにと思ったが、
          茶店の外に出ると1kmぐらい先の家を目指して走っていく点みた
          いに小さくなった店主の姿があった。店の裏には間違いないが・・

    茶店の兄妹 茶店の兄妹

    18時   イフ・テンゲル迎賓館着。外からは大したことも無いホテルだが、
          部屋は迎賓館ともあってとても広い。旅行で最初の風呂に入る。お
          風呂にも絨毯が敷き詰めてある。
    19時   夕食マトン餃子、なかなかうまい。
    21時   ホテルのビリヤード。ホテルのボーイが結構上手。客相手にかせい
          でいるようだ。
    22時   寝る。

    3月10日(月) 晴れ
    4時    めざまし無しで起きる。5時と思ったがまだ4時だった。ヘールボ
          ップを見る。ウランバートル中心部の夜景の上であるが尾も長い。
          昔見たベネット彗星の雄姿を思い出す。


    ヘールボップ彗星 彗星
    (CanonF1+300mm F5.6 露出60秒)

    8時    食事マトンチャーハン。
    9時    ウランバートルの町へ。町まで他の日食の団体のバスに同乗。
    9時半   銀行で両替。
    10時前  自然科学博物館へ。恐竜がメイン。他の観測隊も来ている。
    14時   ウランバートルホテルで昼食マトンミートスパゲッティ。郵便局で
          日食カードを買う。これも龍が太陽を食べている図柄。

    日蝕のカード カード

          1日中歩き回る、この旅行で一番ハードな日。町の住宅地の中を豚
          や牛が歩き回っている。
    17時   ウランバートルホテル発、ザイサントルゴイ展望台へ。時間が無い
          ので頂上までは登らない。
    18時   ホテル イフ・テンゲル迎賓館着、
    19時   夕食マトン天ぷら。入浴の為5分遅れる。皆集まりが早い。
          みんなお風呂はどうしたの?
    21時   大清算大会。
    23時   パッキングを済まし寝る。

    3月11日(月) 晴れ
    3時    起きる。ヘールボップを見る。昨日より透明度が悪い。暗やみの中
          で三脚を延ばした時にレリーズが引っ掛かりシャッターボタンをち
          ぎってしまう。テープでとめてなんとか使えるがレリーズ撮影不能。
          写真はあきらめる。
    6時    朝食コーンハムエッグ。
    7時    出発空港へ。8時前に空港へ。カウンター嬢が間違って8時の便に
          チェックインしてしまった。航空券の時間を確認しなかったらしい。
          でもどうにか10時の便に変更。空港税12$をわざわざ隣の窓口
          のカウンターで現地通貨に換金して支払う。
    8時半   ゲート待合室へ。免税店で日食ウォッカ2本買う。

    日蝕ウォッカ ウォッカ

    10時   北京へ向け出発。
    12時   定刻北京着。前と同じでトランジットにてカウンターを通過。
    15時   成田へ。3時間で成田。最後に寝入ってしまい着陸で目が覚める。
    19時   定刻成田着。
    19時48分成田EXPで横浜へ。
    21時20分横浜着。
    22時   自宅 ダウンを着ているのでまたまた大汗。

    注:旅行中メモを取っていないので時間はだいたいの時間。

                           97年3月16日掲載


                    

Copyright(C) 1997 Shinobu Takesako
All rights reserved