5.1 グリーンベルガー(C. Grienberger)の星表



 中国の星座を描いた現代の星図 は、16世紀末から布教のため中国で活動したキリスト教宣教師が、西洋の星図や星表を参考に観測し、同定したとされる星図を基礎としたものである。宣教師が編纂した星表や星図は、江戸時代に日本へも輸入され影響を与えた。それまでの渋川春海が観測編纂した星表や星図に替わり、これらを元にした星図も製作されている。

 宣教師は天体観測を行い、中国の星座を同定したとされれてきているが、実際には西洋の星図や星表をもとに、観測によらず同定を行った。その時に使用した星表の一つがこの星表である。1600年代から1700年代にかけての西洋の星表はまだ数が少なく、中国の星座の星1500余りを正しく同定することはできなかった。

 この星表はクリストフ・グリーンベルガー(1561-1636)が1612年に発表した『Catalogue veters affixarum Longitudes』に掲載した星表。ティコの777星、フランシスコ・ピフェトの193星、ティコの観測地では見えない『アルマゲスト』の南方の258星を合わせた1228星の星表。南極周辺の星は含まれない。筆者がティコの星表と比較したところ、ピフェトとされる193星のうち180星はティコの星表の777星から1004星への増加分227星に含まれる。グリーンベルガーはイエズス会々員であり、中国に派遣された宣教師との関係もあった。


参照した星表
 C. Grienberger、『Catalogue veters affixarum Longitudes』、1612、 【www.lindahall.org】
 主にPage 57 to 66。
 星表の区分: T ⇒ Tycoの星表、F ⇒ フランシスコ・ピフェトの星表、C ⇒ アルマゲストの星表
        Keplerの欄はルドルフ表の星表番号。



2025/05/07 Up
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