『Uranometria』はJohann Bayer(1572-1625)が1603年発表した星図である。南天の星図も含まれるが,星表には光度だけで位置情報はない。北部,黄道帯,南部の星図の終わりにそれぞれの星数の記載があり,一般に描かれた星の総数はその和の1706とされている(注)。しかし,南部の星の数に続けて,「Hae superioribus adiunetae numerum circiter 1725.(These are the upper parts connected therewith, the number of about 1725.)」とあり,北方の星を加えた総数は1725星とも解釈できる。
『Uranometria』は1600年までに行われた星の位置の観測結果を集大成した星図であるが,これまで各星図に描かれた星を同定した文献はない。筆者はLinda Hall Library所蔵の『Uranometria』をもとに,以下の49枚(但し,プレート42と43の星図は同じ)の星図の星の位置を読み取りその星の同定を行った。各星図では,『Uranometria』の星を赤丸,同定した星の位置を緑丸,描かれていない6.2等星以上の星を青丸,星雲を黄丸で描いている,赤と緑の丸の中心を線で結んでいるが,この線が長い星は誤差が大きいことになる。なお,星図に書いたバイエル符号は現代の星表での識別で,『Uranometria』とは違う可能性もある。また『Uranometria』の光度も筆者が判断した値である。
各星図で描かれている星の総数は約3570星であり,そこから重複を除いた数は1728個となった。したがって,Bayerが所有していた星表には上記記載の1725の星が載っていたことになる。また各星図に描かれている星を見ると,Bayerはその星図の描画範囲にある全ての星を描いたのではなく,選択して描いていることもわかる。例えば12Auriga(ぎょしゃ座)の右下にはプレアデスがあるが描かれていない。
Bayer星表 (Epoch1600)
(注) 『Uranometria』に描かれた星の数については星図の北部(三角座(No.21)),黄道帯(魚座(No.33)),南部(南極の星座(No.49))の星図の終わりにそれぞれ700(699)星,445星,そして561星との記載がある。合計すると1706(1705)星となる。この内1等星から6等星までの星数は1380である。これらの星は南極の星(約120)を除きBayer符号が採番してある。J. D. Warner(1979)p.18は,Bayerが星数を「1706 plus 325」としているとするするが325は採番していない星座外縁の星で内数の誤りである。I. Ridpath(2018)p.33も掲載星数を2千を超えるとするが同様の誤りである。
参考文献
I. Ridpath 「Star Tales (2nd edition)」Lutterworth Press (2018)
J. D. Warner 「The Sky Explored」Theatrum Orbis Terrarum (1979)
同定用星表及び歳差計算参考計算式
Myers J.R., Sande C.B., Miller A.C., Warren Jr. W.H., Tracewell D.A.
「SKY2000 Master Catalog, Version 5」A&A516,A26 (2006)
D. Hoffleit & W.H. Warren 「The Bright Star Catalogue, 5th rev.」 (1991)
J.Meeus 「Astronomical Algorithms (2nd Ver.)」Willmann-Bell inc. (1998)