ギリシャ星座神話の参考文献


 ここではIan Ridpath「STAR TALES」の巻末にある参考文献をもとにギリシャ星座神話の文献を紹介します。



星座物語


・「STAR TALES」 Ian Ridpath, Universe Books, 1988
 R.H.Allenの「Star Names」1899(reprinted by Dove,1963)の内容が若干古くなってきた現在、最新の星座案内書である。特にこの本は従来の星座伝説本にある”孫引き”の情報ではなく、ギリシャ神話の古典及び最新の星座の研究に直接当たっている点が特徴。

・「PHAENOMENA」by Aratus (LOEB CLASSICAL LIBRARY #129, CALLIMACHUS/LYCOPHRON/ARATUS)
 ギリシャの天文学者エウドゥクソス(BC.400〜347年頃)の同名の書をもとにアラートスが275年頃詩に書き換えた。エウドゥクソスの原文は伝わっていないのでこれがまとまったものではギリシャ星座神話の最古の文献である。ロエブ文庫よりギリシャ語・英語対訳本が出版されている。

・「CATASTERISMS」by Eratosthenes
 古代エジプト・アレキサンドリアの図書館長を勤めたとされるエラトステネスの書いた「CATASTERISMS」はギリシャ語で「星座」を意味する。もっとも現在ではPseudo-Eratosthenes作とされ実際にエラトステネスが書いたものとはされていない。しかし、ギリシャ語で記述されておりギリシャ古代の星座文献という意味で重要である。内容は大熊座にはじまり一つ一つの星座の由来を説明し銀河の説明で終わるという現代の星座物語と同じ形式となっている。しかし、英訳も出版されておらず「Star Tales」でもAbbe Halmaの出版したギリシャ語・仏語対訳本「LES CATASTERISMES D'ERATOSTHENE」1821が参照されている。

・「POETICA ASTRONOMICA」by Hyginus
 ヒュギーノス(AD.2世紀頃)はギリシャ語文献をもとに「FABULAE」及び「POETICA ASTRONOMICA」を書いた。「FABULAE」はギリシャ神話全般、「POETICA ASTRONOMICA」は天文特に星座伝説を述べたもの。「POETICA ASTRONOMICA」も「CATASTERISMS」と同じく星座別にその由来・伝説を語っている。
 英語訳として「MYTHS OF HYGINUS」Mary Grant,University of Kansas Publication,1960がある。

・「STAR MYTHS OF THE GREEKS AND ROMANS:A SOURCEBOOK」by Theony Condos,Phanes Press,1997
上記の「POETICA ASTRONOMICA」と「CATASTERISMS」の英訳本。星座毎に英訳およびコメントがあり分かりやすい。たぶんこれを読まないで星座物語は語れない。「CATASTERISMS」としては英文での最初の出版。


ギリシャ・ローマ神話の原典


ギリシャ・ローマ神話の原典はハーバード大学出版の「LOEB文庫」から多く出版されている。タイトルのよこにつける#は文庫での番号。LOEB文庫ではギリシャの文献はギリシャ語・英文の対訳、ローマの文献ラテン語・英語の対訳となっている。

・「ILIAD I & II」by Homer (#170 & #171)
 説明するまでも無くトロヤ戦争をめぐる神話です。シュリーマンがクリスマスにもらった童話版でトロイ発掘にまで至ったことは有名。
 和訳では岩波文庫より松平千秋訳「ホメロス・イリアス」が出版されている。

・「ODYSSEY I & II」by Homer (#104 & #105)
 トロヤ戦争から帰還する英雄オディッセイアの物語。
 和訳では岩波文庫より松平千秋訳「ホメロス・オディッセイア」が出版されている。

・「THE HOMERIC HYMS AND MOMERICA」 by Hesiod (#57)
 「仕事と日」、「神統記」などが含まれている。星座の話では後世の作品に「ヘシオドスによれば」として紹介されて伝えている星座の話が「Astronomy」として編集されている。ただし中身はわずか。(大熊座、オリオン座、とプレアデスヒヤデスの一部のみ)
 和訳では岩波文庫より松山千秋訳「ヘーシオドス・仕事と日」
          廣川洋一訳「ヘシオドス ・神統記」 が出版されている。

・「THE LIBRARY I & II」by Apollodorus (#121 & #122)
 題名の通り神話の話が図書館の様に集められてる。英訳はあのゴールデン・ブロー(金枝篇)のフレーザー。
 和訳では岩波文庫より高津春繁訳「アポロドース・ギリシャ神話」が出版されている。

・「THE ARGONAUTICA」by Apollonius Rhodius (#1)
 アルゴ船に乗って黄金の羊の毛皮と取りに行く物語。

・「THE METAMORPHOSES I & II」by Ovid (#42 & #43)
 和訳では岩波文庫より中村善也訳「オヴィディウス・変身物語」が出版されている。

・「THE FASTI」by Ovid (#253)
 暦にそって祭事や星座を描く。半分しか伝わっていないのが残念。
 和訳では国文社より高橋宏幸訳「オウィディウス・祭暦」が出版されている。

・「TETRABIBLOS」by Ptplemy (#171)
 プトレマイオスの書いた占星術の本ということで有名。

・「ASTRONOMICA」by Manilius (#469)
 和訳では白水社より有田忠郎訳「マニリウス・占星術または天の聖なる学」が出版されている。


ギリシャ・ローマ神話の辞典


 ギリシャ神話にはいくつものバージョンがあるので辞典は概要を知るのに便利。括弧内は当方所有の版。


・「THE OXFORD CLASSICAL DICTIONARY」N.G.L. Hammond and H.M.Scullard,
                  Oxford University Press,1970(1991)
・「THE PENGUIN DICTIONARY OF CLASSICAL MYTHOLOGY」Pierre Grimal, Penguin Books,1951(1991)
・「ギリシャ・ローマ神話辞典」高津春繁著、岩波書店、1960(1996)




                    

2000/07/09 revised

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