太子道(筋違道)北部経路考(2023/02)


 

 これまで考えていた筋違道の北部の経路は右図のように、飛鳥から北上してきた太子道が、現在の寺川にぶつかる点を起点として、寺川の方位で龍田道まで単純に延長したものだ。しかし、先月(2023年1月)に筋違道を踏破してみて、実際の安堵町付近の古道の経路は西(左)に100mぐらいずれていた(図1)。

 昔の寺川の流路は分からないが、飛鳥からの筋違道をその方位で延長した場合には、500mぐらい西にずれていることになる(図2)。また、北部の筋違道の経路をそのまま延長した場合、『島の山古墳』の北の中央部にぶつかる(図3)。『筋違道』の南部の方位は、18.21°の真北からの西偏だが、この北部経路の方位は21.16°と約3°違う。しかし、二つの道はほぼ平行なので、この近辺では交差しない。したがって、二つの平行した道を接続するためには、安堵町の古道の南端と『島の山古墳』の間に、少なくとも一本の東西の道が必要となる。

【図1】
【図2】
【図3】

【表1 計算に使用したデータ(西側溝東縁)と推定線(近似直線)との誤差】(誤差は推定線が正が西、負は東にあることを示す)

 データは全て『GooglMap Pro』で読み取った値。
世界測地系 場所 計算値(近似式) 備考
測定点 Y座標(m) X座標(m) 緯度 経度 Y座標(m) 誤差(m)
安堵町古道測定点 -22645.8 -154102.9 34.610624 135.753070 -22645.2 -0.7
同上 -22632.6 -154136.1 34.610325 135.753215 -22632.4 -0.2
同上 -22620.9 -154153.1 34.610172 135.753343 -22625.9 5.0
同上 -22612.2 -154203.1 34.609721 135.753439 -22606.6 -5.6
同上 -22598.5 -154223.0 34.609542 135.753589 -22599.0 0.5
同上 -22591.0 -154246.3 34.609332 135.753671 -22590.0 -1.0
同上 -22584.3 -154260.6 34.609203 135.753745 -22584.5 0.2
同上 -22572.0 -154290.6 34.608933 135.753880 -22573.0 1.0
同上 -22567.0 -154301.9 34.608831 135.753935 -22568.6 1.7
同上 -22562.1 -154319.0 34.608677 135.753989 -22562.1 0.0
同上 -22556.7 -154334.8 34.608535 135.754048 -22556.0 -0.7
同上 -22540.9 -154379.3 34.608134 135.754221 -22538.9 -2.0
同上 -22535.7 -154397.3 34.607972 135.754279 -22532.0 -3.7
同上 -22528.2 -154413.1 34.607830 135.754361 -22525.9 -2.2
同上 -22519.1 -154436.2 34.607622 135.754460 -22517.1 -2.1
同上 -22512.7 -154453.6 34.607465 135.754531 -22510.4 -2.3
同上 -22504.6 -154466.0 34.607353 135.754619 -22505.6 0.9
同上 -22497.9 -154479.5 34.607232 135.754693 -22500.4 2.5
同上 -22433.6 -154620.1 34.605966 135.755398 -22446.4 12.8 使用せず。
同上 -22429.4 -154662.2 34.605586 135.755444 -22430.2 0.7
同上 -22422.1 -154725.5 34.605016 135.755526 -22405.9 -16.2 使用せず。
同上 -22379.1 -154755.5 34.604746 135.755995 -22394.3 15.2 使用せず。
同上 -22367.3 -154820.4 34.604161 135.756126 -22369.4 2.1
同上 -22345.1 -154880.3 34.603622 135.756369 -22346.4 1.2
同上 -22322.7 -154940.3 34.603081 135.756615 -22323.3 0.6
同上 -22305.8 -154969.5 34.602818 135.756800 -22312.1 6.2
『島の山古墳』北面中央 -21539.9 -156984.6 34.584796 135.766103 -21537.3 -2.6
 (注:地図座標系でのX座標とY座標は、数学でのX軸、Y軸とは逆。)  

 

北部『筋違道』想定経路の方位

 右図は上記のデータをグラフにしたものだが、これより導かれた近似式で計算すると、古道の南約2km南にある『島の山古墳』北面中央の場所とは2.6mしか違いがないことになる。
 方位は、方位=90-atan(2.60188)+0.1292(直角座標補正、約8.35分)=21.16°(真北から西偏)となった。南部の方位、18.21°と比べると約3°西に振れていることになる。

【図4】
北部『筋違道』想定経路

 ここでは、飛鳥から北上してきた太子道が、現在の寺川にぶつかる点の対岸にある『糸井神社』が延喜式の神名帳に記載されている古い神社であることを考慮し、この辺りに古代でも川が流れていたと推定した。 そして、南からの『筋違道』が寺川にぶつかる点を起点として、『島の山古墳』の北の地点を結ぶ道を接続路に想定した(図4)。

 『筋違道』は北部で一箇所左に折れて北に進むと一般に説明されているが、北部と南部の道の方位はほぼ同じで並行なので、その説明は明らかに誤りだった。このように、古道の話は、根拠もなしに定説になってしまっている話が多い。

 『筋違道』の北部の道は、南部と方位が違い、明らかに『島の山古墳』から北に向けて敷設されたと考えられ、『筋違道』より以前に、もともとあった道である可能性が高い。北部の道が既設で存在していなければ、南から単純に龍田道まで延長すれば済んだことになる。


  【図5】

北部『筋違道』最終想定経路

 図6が『筋違道』の北部の道の想定経路の最終形態。
 『筋違道』が『龍田道』と直角に交わっていることがわかる。

【GooleMapでの経路表示】


  【図6】


2023/02/07 掲載

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