恒星の視位置の計算例




     恒星の視位置の計算についてはすでに[JPL DE 天文暦]で天文計算にて C言語でのソース(jpl_eph_5.0.zip)を公開していますが、ここでは星表の元期がICRS(1991.25)という不規則なHipparcos星表の計算例を示します。

     まず表1はASTRONOMICAL ALMANAC 2019に 計算例として掲載してある例です。対象星はα1 Cen (HIP71683,HR5459)です。 計算例ではDE430で計算してありますが、DE405でも結果は同じです。 結果は赤経:14h40m52.3309s、赤緯−60°54m21.915"なので、最後の桁が四捨五入で違っている程度です。

    表1 ALMANAC2019の例題
    条件DE= 405 jd= 2458484.50
    proper motions -3678.060000 mas/yr 482.870000 mas/yr
    parameterPallax(π)= 0.742000(")v= -21.600(km/s)
    赤経 赤緯
    初期値(2000) 219.902066 -60.833975
    (h.ms/d.ms) 14.39364958 -60.5002309
    固有運動分 -0.039503 0.002596
    光差分 -0.006048 0.004145
    歳差章動分 0.361530 -0.078853
    合計 0.315980 -0.072113
    計算結果 220.218046 -60.906088
    (h.ms/d.ms) 14.40523310 -60.5421916


     表2はHipparcos星表【I/311 Hipparcos, the New Reduction (van Leeuwen, 2007)】のデータをそのまま使用したものです、ただし、v(radial velocity)= -24.600(km/s)についてはカタログにないために、[I/196 Hipparcos Input Catalogue, Version 2 (Turon+ 1993)] から採った値です。Hipparcos星表は元期がICRS(1991.25)なので固有運動分の部分のみ8.75年(2000-1991.25)だけ余計に加えています。

    表2 Hip2007のデータによる Epoch1991.25版
    条件DE= 405 jd= 2458484.50
    proper motions -0.503327 s/yr 0.473670 "/yr
    proper motions -3679.249985 mas/yr 473.670000 mas/yr
    parameterPallax(π)= 0.754810(")v= -24.600(km/s)
    赤経 赤緯
    初期値( 1991.25) 219.920408 -60.835145
    (h.ms/d.ms) 14.39408980 -60.5006523
    固有運動分 -0.057877 0.003707
    光差分 -0.006048 0.004145
    歳差章動分 0.361531 -0.078853
    合計 0.297606 -0.071002
    計算結果 220.218014 -60.906147
    (h.ms/d.ms) 14.40523235 -60.5422129


     表3はHipparcos星表の位置データをあらかじめ固有運動分だけ8.75年分単純に加えてEpochを2000年に移動させて計算した結果です。 表2との結果の違いは360°表示で小数点以下5桁目ということで違いは少ないです。

    表3 Hip2007のデータによる Epoch2000移動版
    条件DE= 405 jd= 2458484.50
    proper motions -0.503327 s/yr 0.473670 "/yr
    proper motions -3679.382456 mas/yr 473.670000 mas/yr
    parameterPallax(π)= 0.754810(")v= -24.600(km/s)
    赤経 赤緯
    初期値( 2000.00) 219.902058 -60.833994
    (h.ms/d.ms) 14.39364938 -60.5002378
    固有運動分 -0.039513 0.002548
    光差分 -0.006048 0.004145
    歳差章動分 0.361531 -0.078853
    合計 0.315970 -0.072161
    計算結果 220.218027 -60.906155
    (h.ms/d.ms) 14.40523265 -60.5422157


     最後に国立天文台のWEB「恒星の視位置」でHIP71683の 2019/01/01午前0時の位置を計算すると14h40m52s.331、-60° 54' 22".14の結果が得られます。このWEBでは「改訂ヒッパルコス星表」を使い、視差: 754.81[mas] ということ以外、計算方法やデータは全くわかりません。
     プログラムで幾つかのパターンで検証したところ、表2のケースでV(radial velocity)=0とした場合に結果が一致しました。Radial velocityのパラメータは「ヒッパルコス星表」の観測値には無いので、v(radial velocity)=0として計算してあるようです。(推測)


    表4 Hip2007のデータによる Epoch1991.25版 v=0 天文台版(予想)
    条件DE= 405 jd= 2458484.50
    proper motions -3679.250000 mas/yr 473.670000 mas/yr
    parameterPallax(π)= 0.754810(")v= 0.000(km/s)
    赤経 赤緯
    初期値( 1991.25) 219.920408 -60.835145
    (h.ms/d.ms) 14.39408980 -60.5006523
    固有運動分 -0.057846 0.003705
    光差分 -0.006048 0.004145
    歳差章動分 0.361531 -0.078853
    合計 0.297637 -0.071004
    計算結果 220.218045 -60.906149
    (h.ms/d.ms) 14.40523308 -60.5422136


                    


2019/06/22 up
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