渋川春海『天文瓊統』の星表



 今回は渋川春海が元禄11年(1698)に書いた『天文瓊統』に含まれる星表です。
 筆者が『渋川春海の星図の研究』数学史研究 231号(2018/11)として発表した論説に附表-1として含まれる星表です。
 この星表は中国星座の星のみで、春海が制定した独自の星座の星は含まれません。
 この論説のなかで渋川春海が元の星表「三垣列舎入宿去極集」(『天文匯抄』に含まれる)を参照して観測したことを発表しました。
 『天文匯抄』は「北京図書館古籍珍本叢刊78」に『天文匯抄十一種』として出版されています。(国会図書館所蔵)

【星表の項目の説明】
1) 星表順、入宿度、去極度は渡辺(1963)の表による。筆者が追加した星には番号を付けていない。
  『天文瓊統』の入宿度/去極度と西洋度との変換は以下の式で行った。
   赤経 = [各距星の1690年での赤経] + 入宿度/365.25x360.0  ------- (1)
   赤緯 = 90.0 - 去極度/365.25x360.0 ------- (2)
   なお内規の内側の星は宿度の値が『天文瓊統』の星表には無いので『天文成象』(1699)の星図の画像データをもとに北斗七星の[48 β UMa]の1690年の位置を基準として変換した。
2)現代星表は 「Bright Star Catalogue 5.0」 及び 「SKY2000 Master Catalog, Version 5」
3) 同定では渡辺(1963)及び小川(1932,33,34)の同定とも比較した。
 渡辺の同定はBoss星表(1910)の星表番号ではなく、引用されている星表の番号や明記されてない星表を使用しており参照が難しいので、Boss星表や重星表との比較を行いそのほとんどをHR番号に置き換えた。渡辺(1963)の同定では光度より距離(角度)を優先して暗い星で同定している場合があるが、明るい星についてはほぼ同じ同定であることを確認した。
 星表の同定比較で[ o ]は同定が同一、[△]は重星など、[ x ]は相違、[ - ]は同定無し、[ ? ] は特定できず、である。
4)『元星表』は『元星表』の同定する星とHR番号が一致し星座名が同じ星。
 『元星表』の星表番号、入宿度/去極度は潘鼎(1989)p284-308による。
5)数値比較は『天文瓊統』と『元星表』との宿度/去極度の差。合致は、○:近い値(四捨五入を考慮すれば一致)、◎:一致。

【参考文献】
  1)渋川春海 「天文瓊統」国立公文書館蔵(15巻本)(WEB版)
  2)同 「天文瓊統」写本 国立天文台蔵(8巻本)(WEB版)
  3)小川清彦 「支那星座管見」天文月報,26巻6-7号 (1933) (著作集に収録)
  4)同 「続支那星座管見」天文月報 27巻8-12号 (1934) (著作集に収録)
  5)渡辺敏夫 「保井春海星図考」東京商船大学研究報告 自然科学 14号(1963)
  6)同 「近世日本天文学史〈下〉観測技術史」恒星社厚生閣(1987)
  7)潘鼎 「中国恒星観測史」学林出版社(1989)
 


2019/03/15 Up

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